第19話:伝えそびれた言葉

中途半端 絵本

会社の帰り道、いつものカフェを通り過ぎようとした時、ガラス越しに懐かしい顔が見えた。
学生の頃の友人で、もう何年も会っていない。

 久しぶりだな …  胸の奥が少しざわつく。
あのとき、ちゃんと伝えたかった言葉が、ふいに喉の奥で詰まる。

「よっ、久しぶり」
席に着くと、相手は変わらない笑顔で迎えてくれた。

ぎこちない空気は、時間と共に少しずつ溶け、昔の他愛のない話で盛り上がる。

でも、言いたい言葉はまだ言えないまま,,,

勇気を出し胸の内を明かす。

「あの頃、君が気にしていたことさ、別に怒ってないよ」

「俺もさ、言えなかったけど、感謝してたんだよ」

言葉にできず、ずっと心の中にあったもが、今やっと形になって伝えられた。

少し遅かったけど、言えたことが嬉しかった。

目の前の友人も、どこか安心したかのように微笑む。思いが言葉になった瞬間、心がすっと軽くなるのを感じた。

店を出ると、柔らかな夕日が街、僕たちを照らし包みこむ。

「 またな 」

「 うん、また 」

伝えそびれた言葉が、今日、友人の心に届いた。

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