朝、鏡の前で歯を磨いていると、ふと自分の顔が気になった。目の下のクマが前より濃くなっていて、髪の生え際には白髪がちらほら。
「寝不足かな」なんてつぶやいてみたけれど、どこかで気づいていた。これは、疲れだけじゃない。少しずつ、確実に、年を重ねている証なんだと。
電車の窓に映った自分の姿に、思わず目を疑ってしまうことも。スーツの肩が落ちて見えたし、背筋もどこか丸まったような,,,
若いころは、“自分だけは変わらない”なんて思ってたのに。時間って、いつの間にかこうやって、体にも心にも積もっていくんだなと感じた。
スマホの整理中、たまたま開いた10年前の写真には、真っ直ぐな目で笑う過去の自分。どこか無防備で、元気そうで、軽やかな印象だった。
あの頃の僕に、今の僕はどう映るだろう。でも、あの頃にはなかった視点や、言葉、優しさが、今の僕にはあると思っている。
老いを受けとめたくなかったのかもしれない。「まだ若い」って思いたくて、疲れをごまかしたり、加齢を笑って済ませたり。
でも本当は、少しずつ変わっていくことに心の奥では不安を感じていた。ただ、弱くなったわけじゃない。変化の中にも、積み重ねた経験や、柔らかさなどがあると思う。
そう気づくと、なんだか心が晴れだす、完璧じゃなくても、キラキラしてなくても、今の僕でいい。
今日もまた、いつも通りの日常を生きている。それだけで、十分すごいじゃないか。
老いが他人事じゃなくなってきた今だからこそ、ちゃんと自分をいたわってあげようと思えた夜だった。