第55話:“どこにも居場所がない”と感じた夜に

大人の 絵本

駅のホームに立つと、夜風が僕に語りかけるように頬をなでる。ついさっきまで誰かと話していたのに、ふいに一人になった途端、胸の奥が落ち着きを取りもどす。

たくさん話し、笑った。だけど心はなぜか?そこにあまりいない気がする,,,「楽しかったね」という言葉の向こう側で、僕の居場所は無いように感じた。

話題に合わせてうなずいて、笑いもしたけど、今日は本音が一つも言えず、話せば「気にしすぎだよ」って、また言われる気がした。

どうでもいい話が続くなか、どこか自分だけが浮いてるような、そんな感覚が拭えなかった。こんなに人に囲まれているのに、僕の声は誰にも届いていない気がした。

「大丈夫?」って聞かれても、何が大丈夫じゃないのか、うまく言葉にすらできない。疲れてるだけ。忙しかった。本当はそんな理由じゃないのに、そう言ってはごまかしてしまう。

“居場所がない”なんて、そんなこと誰にも言えない。言葉にした瞬間、もっと孤独になってしまいそうだから,,,

家に帰る気になれなくて、遠回りして歩いていると、気づけば小さい頃よく通っていた公園のそばにいた。夜の公園は静かで、誰もいないベンチに腰を下ろした。あの頃は何も考えず、ただそこにいるだけでよかった。

誰も否定せず誰も責めずそこにいられた場所。思い出の中のその場所は、今も変わらず僕を受け入れてくれた。

本当の“居場所”って、完璧な理解や共感じゃなくて、ただ「ここにいていい」と思えた記憶なのかもしれない。

今は見つからなくても、いつかまた、そう思える場所に出会える。深呼吸して、もう一度だけ信じてみよう。「居場所がない」と感じるこの夜も、きっと物語の途中

僕はひとりじゃない。そう思える瞬間を、また迎えに行こう。

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