父の通院に付き添った日、病院の待合室で並んで座っていた。診察が終わり、立ち上がった父の動きが少しゆっくりで、廊下を歩く後ろ姿が、なんだか頼りなく見えた。
「昔は大きく見えた背中が、いつの間にか小さく感じる」その変化を受け入れきれず、歩調を合わせた。
帰り道、父が何気なく言った。「自分のことより、お前の体が心配だ」笑いながらそう言った父の顔が、妙に気持ち悪く感じ、切なかった。本当は、自分の体が気になってるくせに。そう思いながら、何も返さなかった,,,,
帰宅し、電気を消した部屋。ぼんやりと天井を見上げながら思った。
“親よりも長く生きる”って、つまり見送るということだ。ずっと子どものままの気でいたけど、少しずつ、立場が変わっていく現実に気づいてしまった。
親を失う不安は、今すぐどうにかできるものじゃない。でも、そのときが来たとしても、僕は僕の人生を生きていたい。親が安心できるような、背中を見せていたい。「もう大丈夫」って、ちゃんと伝えられるように,,,
親のいない未来を想像するのは、正直少し怖い。でも、それでも前に進むしかない。僕の人生の時間も限られている。どう生きるかは自分で決める。そう思って見上げた空に、月が黙って見つめていた。