「強くなりたい」って、ずっと思ってた。誰にも頼らず、何があっても自分で乗り越える人。そういう人がかっこいいって思ってたし、そんなふうに見られたくて、いつも平気なふりをしていた。
本当は不安だったし、泣きたくなる夜だってたくさんあったけど、「こんなことでへこたれるな」って、自分を奮い立たせてきた。笑って、明るくて、何でもできる理想の自分を演じ続けた。
誰かに弱音を吐くのは、甘えだと思ってた。「大丈夫?」って聞かれても、「うん、大丈夫」って返してた。そんなふうに答えることが、いつの間にか習慣になっていた。本当は助けてほしいこともあったけど、「そんなこと言っても、どうせ迷惑かけるだけ」って思ってしまう自分がいた。弱さを見せた瞬間、崩れてしまいそうな気がして怖かった,,,
ある日、何気なく話していた知人に、ぽつりと言われた。「無理してない?」と。その言葉が、胸の奥に響き、驚いた!「なんで、分かったんだろう」たったひと言なのに、張り詰めていた何かが崩れる気持ちになる。誰にも気づかれなかった“しんどさ”を、拾い上げてもらえた気がして。その瞬間、体の力が抜け、何も言えなくなった。
その日の帰り道、ひとりで歩きながら涙がこぼれ、大声で叫んだ。理由なんてわからない、うまく説明できないけど、止まらなかった。あんなに我慢してたのに、あんなに「泣かない自分」でいたかったのに、いまはただ、「泣いていいよな」と思えた。涙が出るのは、頑張ってきた証。あの日、ようやく自分の弱さを許せたような気がしたと思う。
歳を重ねて、ようやくわかってきた。本当の強さって、弱さを隠すことじゃない。弱さを知っているからこそ、人に優しくなれる。自分の心の限界にも、気づけるようになる。無理しすぎたら、ちゃんと「助けて」って言えること。それが、いまの僕にとって新たな“強さ”となった。もう無理はしない。でも、ちゃんと力強く前は向いていたい。そんな自分で、今日も生きていこうと思う。