「ありがとう、助かった」そう言われると、つい無理をしてでも引き受けてしまう。誰かのためにと思って動いていたはずなのに、いつの間にか自分の気持ちは後回し、断るのが苦手で笑ってばかりいた。
言葉を選んで、空気を読んで、場を和ませて。いい人でいることが当たり前になっていた。でも、帰り道ひとりになると、決まってどっと疲れが押し寄せてくる。「あの一言は、余計だったよな ,,, 」「嫌われてないかな?」頭の中で何度も場面を巻き戻しては、自分を責める。誰かに気を使えば使うほど、僕は少しずつ、自分自身を見失っていた。
そんなある日、予定より早く終わった帰り道。少し遠回りして立ち寄った公園で、ベンチに腰を下ろした。春の気候が過ごしやすくて気持ちがいい。誰にも気を使わなくていい空気の中で、ふっと肩の力が抜けた。「ああ、息苦しい」僕はようやく、自分の疲れに気づいた。
スマホを見ず、誰とも話さず、ただ静かに過ごす時間。それだけで、少しずつ心がほぐれていく「無理してまで、誰かに合わせなくてもいい」そんな言葉が心に浮かぶ。優しさって、まずは自分に向けなければ!気を使わなくても、多くの人が僕を嫌ったりなどしない。そう思えたことが、何よりの救いだった。
深呼吸をして、気持ちを整える。たぶん僕はこれからも、誰かに気を使ってしまうと思う。
でも今度からは少しずつでも、自分の心にもちゃんと耳をすませ、誰かに優しくするように自分のことも大事にしてみよう。それがきっと、僕が僕を見失わずにいられる一歩となるから。