第38話:全部投げだしたくなった日

中途半端 絵本

終電ひとつ前の電車。満員じゃないのに、どこにも自分の居場所がない気がした。
仕事はうまくいかず、ミスも重なり、誰かに責められたわけじゃないのに、心が重い。
何もかも「全部投げ出したい」そんな言葉が、ふいに頭をよぎる。今日に限ったことじゃない。ずっと、ギリギリだったのかもしれない,,,,,

イヤホンを耳に差し、音楽も流さずにただ耳をふさぐ。窓の外に流れていく夜の街が、なんだか遠くの世界みたいだった。心も、体も、もう動きたくない!そんな夜は、誰にも知られずに終わってほしいと思う時もある。

乗り換えの駅で、ふと目に入ったコンビニの照明。目的もなくふらっと入り、缶ビールと、から揚げをひとつ買った。レジ袋の底に伝わるぬくもりと、缶のひんやりとした重みが、少しだけ「生きてる実感」を感じさせてくれた。誰かと話さなくても、誰かに笑われなくても、こうして僕は、まだちゃんと息をしていた。

「人と比べることに疲れ、ちゃんとしようとすることにも疲れる 」 でも、
今日だけは何もしないで帰ろう頑張らないで帰ろう 』たとえ全部うまくいかなくても、今はそれでいい。そう思えた自分を、少しだけ誇らしく感じた。


帰宅して、明かりもつけずに、ビールをひとくち。涙が出るほどじゃないけど、胸の奥がじんわりした。全部を投げ出すのは、たぶん まだ怖い。でも「今日は」少しだけ投げ出してもいいって、自分に言ってあげられた。

それだけで

明日を迎える準備がほんの少しだけできた気がした

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