第37話:本音を言わないって、優しさ?

大人の 絵本

大丈夫ですよ僕やっときます
いつものように、笑って引き受けた。
でも心の中では、ほんとは手一杯なんだけどな … とつぶやいている。誰かに嫌われるのが少し怖くて、本音を飲み込むのは、もう慣れてしまったクセみたいなもんだ。

デスクに戻って、モニターを開いても、さっきの言葉が頭から離れない。
本当の優しさってなんだろう?
誰かを思って言葉を選んだつもりが、
実は、自分の立場を守ってるだけだったのかもしれない。静かだけど、確かなざわめきが胸の奥に広がっていた。

少し前、別の同僚が同じように断っていたことを思い出すごめんそれ今は難しい  』
その一言が、 責められるどころかむしろ周囲に信頼されていた  ‼︎ 言葉にすることは、距離をつくるんじゃなくて、理解をつなぐことだったのかもしれない。

僕はふと立ち上がり、自分の机の整理を始めた。ただの整理じゃない。ぐちゃぐちゃになっていた心の整理だ。少しずつでも、本音を押し殺すんじゃなくて、『 ちゃんと伝える 』ことを怖がらないでいようと思った。

さっきの件、やはり僕ひとりでは厳しいかもしれません 』その言葉を相手に伝えると、一瞬、沈黙したが、

「了解、他のメンバーにも少し振り分けてみるね」と笑って返された。

優しさって言わないことじゃない 』ちゃんと伝えることも、立派な優しさだと気づけた日だった。

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