家から歩いて40分。サトウキビ畑の間を抜け、細い坂道を登った先に、かつて僕が通っていた小学校がある。数年前に廃校になったと聞いて、ふと思い立って訪れてみた。誰もいない校庭に風が吹き抜け、春の花びらが舞っていた。
外から覗いた教室には、もう机も椅子もなかった。けれど僕の中には、あの頃の景色がはっきりと残っていた。音楽の授業でふざけすぎて、先生を困らせてしまい泣かせてしまったこと。放課後、夢中でバットを振っていたこと。いつかプロ野球選手になりたい ! そんな夢を話した日もあったな,,,
気づけば、あの頃の夢はいつの間にか現実的じゃないの一言で封印していた。
でも、あの教室に立った瞬間、胸の奥がじんと熱くなる。今の僕は、あの頃の僕に胸を張れるだろうか⁉︎ 問いかけるように、空を見上げた。
仕事も生活も、ちゃんと頑張っている。夢のかたちは変わったけれど、『 誰かの心をあたためたい 』という想いは、ずっと持ち続けていた。そう気づいたとき、あの日の自分が少し笑ったような気がした。
帰り道、僕はスマホのメモにこう打った。
夢を叶えることだけがすべてじゃない
でも
夢を思い出すことは、今を前に進む力となる
今日、あの日の僕に会いに来て、本当によかった。