夜が明け間もなくして、僕はカバンを持ち家を出る、目指すは面接会場。
「 これでいいんだよな… 」
面接会場の待合室には同じようにスーツ姿の人たちが並んでいた。
みんな、ちゃんと社会に順応しているんだな…
彼らの背筋の伸びた姿や、自然に会話を交わす様子が、余計に僕を小さく感じさせる。
「本当にこれでいいのか? 自分が目指していたのは、この場所だったのか?」
面接が初まり、僕は面接官の質問に無難な答えを返す。
「 長所は真面目で、協調性があります 」言葉は出てくるが、心は空っぽだ。
「本当にそう思ってるのか?」自分自身に問いかける声が、心の中で響く,,,
面接官が不意に問いかける。
「あなたにとって、本当にやりたいことは何ですか?」
一瞬、時間が止まったように感じた。
「 やりたいこと… 」
口を開くと、自然と本音が出てきた!
「 実は、音楽をやっています。人の心に触れる音楽を届けたいという夢があります。でも、現実を見なければいけない部分もあり、この面接を受けました 」
面接官は驚いたように目を見開いたが、次の瞬間、柔らかく微笑んだ。
「その夢、素敵ですね。現実を見つめることも大切ですが、夢を追う勇気を持つことはもっと大切です。」
面接を終えた僕は、こう思う。
「 自分に正直になっていいんだ 」
通りを行き交う人々の中で、僕は小さく笑った。
「 夢は追う勇気を持つことは大切 」
僕の足取りが軽快なのは言うまでもない。帰る道中、僕は面接官を思い浮かべ ”夢を追う勇気を持つ大切さを教えて頂き、ありがとうございました”と思いもう一度、面接会場を見上げ一礼をしこの場をさった。